接客の場兼、リビングのこの部屋で、紫水はソファーに座りながら朝食後の紅茶 をすすっていた。





「紫水さん。やっぱり、彼は当たりでしたよ」


「そうでしたか」





そんな紫水に、2階から身支度を済ませた幸季が、階段を降りながら話しかけた 。





「どんな子か、一度お会いしたいですね」


「じゃあ連れて来ましょうか。それとも、紫水さんが学校に来ます?」




くすくすと幸季が小さく笑う中、また階段を降りる音が響いた。





「あぁ、龍さんおはようございます」



幸季が声をかけると、階段から降りて来た青年は寝ぼけ眼のまま小さく頷き、洗 面所へと向かった。





「相変わらずですね…。じゃあ、僕は行きます」


「はい、行ってらっしゃい。引き続き調査の方よろしくお願いしますね」


「分かりました。随時進めます」





ドアを開けると、路地裏にも朝日が眩しく降りそそいでいた。








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「おはよう始くん。…ちゃんと目覚まし通りだったでしょう?」





恭平が席に着くや、幸季は話をきりだした。





「………やっぱり普通の夢じゃなかったんだ……」


「良い体験出来たじゃない。何でそんなにがっくりするのさ」





言うと、幸季は何時もの様にくすくす笑う。


これがこの男の癖なんだと、恭平はやっと理解した。





「………何なのさ、アレ……」


「夢だよ、君の。ただし、僕が操作した夢だけどね」


「操作…!?」





恭平は机にだらしなく預けていた体を、思わず上げた。





「とにかく、僕は西野君の件を調査にきているんだ。彼本人からの依頼でね。… ……君には是非協力してほしい」


「……よくわかんないけど………俺に出来ることが有るなら……」





すると、始業のチャイムと共に先生が教室へと入ってきた。





「有るさ。…君だって夢操師なんだから」








先生の声で、最後の方の幸季の声は、恭平にはよく聞き取れなかった。






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